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原発避難、国の責任認める判決「裁判官の勇気あるメッセージ」島弁護士が語る意義
2017年03月29日 09時36分

東京電力福島第一原子力発電所の事故で群馬県に避難した137人が、国と東京電力に対して一人あたり1100万円(総額約15億円)の損害賠償を求めた集団訴訟で、前橋地裁(原道子裁判長)は3月17日、原告のうち62人に総額3800万円を賠償するよう国と東電に命じる判決を言い渡した。

報道によると、裁判では、国と東電が大規模な津波が予測して、事前に被害を防ぐことができたかどうかという点や、国が東電に安全対策をとらせるよう命じる権限があったかどうかという点が争点となっていた。

判決は、原発が浸水するような津波が到来する可能性について、東電は「実際に予見していた」として、対策を講じていれば「事故は発生しなかった」とした。また、国についても、津波の発生は「予見可能」であり、東電に津波の対策を命じていれば、津波による被害を防ぐことが可能だったと結論づけた。

原発事故をめぐって国の責任が認められたのは今回がはじめてとのことだが、今回の判決にはどんな意義があるのか。原発の問題に取り組む島昭宏弁護士に聞いた。

東京電力福島第一原子力発電所の事故で群馬県に避難した137人が、国と東京電力に対して一人あたり1100万円(総額約15億円)の損害賠償を求めた集団訴訟で、前橋地裁(原道子裁判長)は3月17日、原告のうち62人に総額3800万円を賠償するよう国と東電に命じる判決を言い渡した。

報道によると、裁判では、国と東電が大規模な津波が予測して、事前に被害を防ぐことができたかどうかという点や、国が東電に安全対策をとらせるよう命じる権限があったかどうかという点が争点となっていた。

判決は、原発が浸水するような津波が到来する可能性について、東電は「実際に予見していた」として、対策を講じていれば「事故は発生しなかった」とした。また、国についても、津波の発生は「予見可能」であり、東電に津波の対策を命じていれば、津波による被害を防ぐことが可能だったと結論づけた。

原発事故をめぐって国の責任が認められたのは今回がはじめてとのことだが、今回の判決にはどんな意義があるのか。原発の問題に取り組む島昭宏弁護士に聞いた。

●「国が自らの責任として、賠償金を支払うのが当然であることが明確にされた」

この判決の最も大きな意義は、言うまでもなく、原発事故に対する国の賠償責任を認めたことです。

「原子力損害の賠償に関する法律(原賠法)」では、原子力事業者、すなわち電力会社のみが原発事故の賠償責任を負う「責任集中制度」を採用しています。

この責任は、「無過失・無限責任」であることを前提として、国は電力会社に対して「必要な援助」を行うものとされています(同法16条)。そして国は、この規定に基づいてすでに9兆円の援助を決めています。つまり、前橋地裁の判決がなくても、国は東電を通して莫大な賠償金を支払っているのです。

しかし、本来は、原発事業が国策として進められてきたことや、国が規制権限を有していることからすれば、東電を通すのではなく、自らの責任として、自ら賠償金を支払うのが当然であり、前橋判決によってこのことが明確にされたわけです。

ただ、国が支払う賠償金の原資は、言うまでもなく、何の責任もない国民からの税金です。つまり、実質的には、国民がいわれなき無限責任を負わされているということを忘れてはなりません。

他方、責任集中制度によって免責とされている原発メーカーは、非難の対象とされることさえなく、1円も支払わないまま、海外への原発輸出によって、さらなる利益拡大を図っているのです。

このような不合理な仕組みを正す是正するためには、国の責任に続いて、原発メーカーの責任を認めさせることが不可欠だということがわかると思います。

●「過失の有無を問わず責任がある」のに、なぜ弁護団は過失の有無を争点としたのか?

東電は、これまで賠償請求に応じてきてはいます。しかしそれは、先ほど述べたように、原賠法上の無過失責任を負っているからです。そのため、東電は、過失の有無については争点にならないという態度でした。被害者が損害額さえ立証すればその通り払うのだからそれで十分だろう、ということです。

しかし、弁護団は、「過失の程度は賠償金の額に影響を与える」として、この点を厳しく追及しました。その結果、前橋判決は、東電には経済的合理性を安全性に優先させたといえるような事情があり、特に非難に値する事実があるとして、実質的に重過失を認め、慰謝料増額の考慮要素になるとしたのです。

この点は、現在、日本各地で行われている損害賠償請求訴訟に大きな影響を与えるかもしれません。

●原発事故によって「平穏に生活する権利」を侵害されたことを認めた

さらにこの訴訟は、避難指示区域外からの、いわゆる自主避難者も原告となって平穏生活権侵害に基づく損害賠償請求をしており、これが認められたという意義も重要です。

平穏生活権には、被ばくの恐怖や不安にさらされない利益が含まれるとされています。つまり、単なる不安感ではなく、合理的な理由に基づく恐怖や不安は、法的保護に値するということです。

判決では、「具体体な健康被害が生じることが科学的に確証されていることまでは必要ないものの、科学的知見その他当該移転者の接した情報を踏まえ、健康被害について、単なる不安感や危惧感にとどまらない程度の危険を避けるために生活の本拠を移転したものと言えるかどうかが重要」と述べられています。

これは、私たちが原発メーカー訴訟で主張しているノー・ニュークス権(原子力の恐怖から免れて生きる権利)に極めて類似したものです。今後、この権利が平穏生活権の一部ではなく、独立した一つの人権として定着していけば、原発のない社会の実現に大きく寄与することは間違いありません。

3.11以降、いくつかの差止訴訟で、かつての反省を活かした判決や決定が出される一方、相変わらず司法の責任や国民の期待を踏みにじる判決や裁判所の態度も散見されています。

そんな中で、この前橋判決は、再び裁判官の良心への信頼を取り戻し、我々に勇気を与えてくれたという意味で、何より素晴らしいメッセージでした。今後も、決してあきらめることなく、粘り強く前に進んでいきたいと思います。

(弁護士ドットコムニュース)

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