6647.jpg
ネット誹謗中傷で懲役刑も…「侮辱罪」の厳罰化、法相が諮問 懸念点は?
2021年09月23日 07時34分

上川陽子法相は9月16日、社会問題となっているネット上での誹謗中傷対策として、侮辱罪に懲役刑を導入する刑法改正を法制審議会に諮問した。

現在の法定刑は、拘留(1日以上30日未満)または科料(1000円以上1万円未満)で、刑法では最も軽い罰則となっている。今回の諮問は、現行法に「1年以下の懲役・禁錮または30万円以下の罰金」を追加する内容だ。

侮辱罪は、事実を摘示せず、公然と人を侮辱した場合に成立する。不特定多数の人がいる場で面と向かって悪口を言うような場合だけでなく、SNSなど公開されているネット上の投稿も侮辱にあたり得る。

厳罰化によってネット上の誹謗中傷を減らす狙いで、ネットでは歓迎する意見が多数だが、その一方で「批判と中傷の線引きが曖昧で、言論が萎縮してしまわないか」「権力者が批判を封じ込めるためにも使えてしまわないか」など懸念する声もみられる。

今回の厳罰化をどう考えるべきか。ネット上の誹謗中傷に詳しい田中一哉弁護士に聞いた。

上川陽子法相は9月16日、社会問題となっているネット上での誹謗中傷対策として、侮辱罪に懲役刑を導入する刑法改正を法制審議会に諮問した。

現在の法定刑は、拘留(1日以上30日未満)または科料(1000円以上1万円未満)で、刑法では最も軽い罰則となっている。今回の諮問は、現行法に「1年以下の懲役・禁錮または30万円以下の罰金」を追加する内容だ。

侮辱罪は、事実を摘示せず、公然と人を侮辱した場合に成立する。不特定多数の人がいる場で面と向かって悪口を言うような場合だけでなく、SNSなど公開されているネット上の投稿も侮辱にあたり得る。

厳罰化によってネット上の誹謗中傷を減らす狙いで、ネットでは歓迎する意見が多数だが、その一方で「批判と中傷の線引きが曖昧で、言論が萎縮してしまわないか」「権力者が批判を封じ込めるためにも使えてしまわないか」など懸念する声もみられる。

今回の厳罰化をどう考えるべきか。ネット上の誹謗中傷に詳しい田中一哉弁護士に聞いた。

●言論の自由に対する懸念「杞憂でない」

——政府は侮辱罪の厳罰化に動くようです。

中傷被害者救済という観点からは歓迎すべき事だと思います。

現状では、投稿者を特定するまで1年近くかかることが少なくありません。そのため、現在の侮辱罪の公訴時効期間(1年)では、特定前に時効が成立してしまうことが多いのです。

この点、今回の改正が実現すると、時効期間も「3年」に延長されますので、このような泣き寝入りのケースは格段に少なくなると思います。

——言論の自由への悪影響を懸念する声も少なからず見受けられます。

萎縮的効果という点では、たしかに懸念があります。

発言する際、常に処罰される可能性を考慮しなければならないとしたら、ネット上で自由な議論は成立しなくなるでしょう。

判例上も、侮辱の成否については、いまだ明確な線引きはされていない状況ですので、そのような懸念は杞憂でないと思います。

●厳罰化だけでなく、被害者と真摯に向き合うための仕組み作りを

——誹謗中傷対策を推進する際、厳罰化のほか、どのような点に留意すべきでしょうか。   私のところに相談に来られる方の中には、「警察に相談したけれども、動いてもらえなかった」という方が少なくありません。

いくら法を変えても、それが適正に運用されなければ意味がありません。「厳罰化して終わり」ではなく、被害者と直接真摯に向き合うための仕組み作りにも配慮して欲しいと考えています。

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る