この事例の依頼主
70代 女性
相談前の状況
ご依頼者様は、ある親族の遺産について公正証書遺言により遺産全部の遺贈を受けることとなっており、その遺言の遺言執行者にも指定されていました。しかし、遺言者である親族が亡くなったあと、実際に遺言執行手続をはじめてみたところ、集める書類も多く、とてもやりきれないということで、当事務所に遺言執行の問題についての解決を依頼されました。
解決への流れ
執行者の代理人に就任することも検討しましたが、相続発生時(平成30年)の民法では、遺言者は深い信頼関係に基づいて遺言執行候補者を選任したのであるから、やむを得ない理由がない限り、執行者による代理人選任が許容されないと解釈されていたため、代理人に就任するのではなく、ご依頼者様に遺言執行者を辞退していただいたうえで、改めて当事務所の弁護士が家庭裁判所から遺言執行者として選任を受ける形を取り、各種遺産の遺言執行を行いました。手続は極めてスムースに進み、2か月もかからずに遺言執行手続は終了しました。
遺言書を作成しても、実際に作成者の死後に、遺言の内容が間違いなく実行されるかについては、当然ながら確認することができません。そこで、その不安を解消すべく、信頼できる者を遺言執行者に指定することを遺言書で定めることが可能です。遺言執行者は、未成年者と破産者を除いては誰でもなることができますが、相続人間の紛争の防止、円滑な手続の執行という意味では、弁護士を指定することがよいでしょう。遺言執行者を弁護士とすることで、本件のように煩雑な手続きを迅速に進めることができます。また、案件によっては縁の切れた兄弟などと関わり合いを持たずに済むこともあります(ただし、遺言執行者は全相続人の代理人とみなされ、公正中立な立場で遺言を執行します。)。