この事例の依頼主
20代 女性
相談前の状況
依頼者様は,元の勤務先で,大きなイベント開場にて,バイトなどに指揮命令し,イベントの運営を取り仕切るスタッフ(正社員)として勤務していました。過労死レベルの長時間労働を強いられていました。しかし,会社の賃金規定では,「基本給の20%」,「職務手当」,「通信手当」等の様々な手当に「残業代である」と書かれており(こうした規定を「固定残業代」と言います。),依頼者様には,これらの手当とは別に残業代は払われていませんでした。
解決への流れ
上記のような賃金規定が無効であるとして,会社を相手取り労働審判を起こしました。2回目の期日において,会社が260万円を支払う旨の調停が成立しました。
基本給の一部であったり,◯◯手当等を残業代として支給する制度のことを固定残業代と言います。このような固定残業代を採用する会社は非常に多くあります。固定残業代を導入すれば残業代を抑制できるとの誤解の元に,長時間労働体質の会社が残業代抑制の手段として固定残業代を導入していると考えられます(実際には,固定残業代を導入しても残業代が抑制されるわけではないのですが,ここでは詳しく立ち入りません。)。今回の依頼者様も様々な手当が「残業代」の趣旨で払われているという,会社側の残業代逃れの意図が明らかな固定残業代の導入例でした。特に,本件の場合,仮に全ての手当(固定残業代)を残業代の支払いとして有効とした場合に,依頼者様の給料を時給換算すると,依頼者様が指揮命令するバイトよりも低い時給になってしまいますので,一連の手当の中に基本給等の残業代ではない性質の賃金が混入していることが明らかな事案です。このように,固定残業代とされる「◯◯手当」の中に,残業代以外の性質のものが混在しているようなケースでは,その手当は残業代の支払いになりません(固定残業代は「無効」となります)。本件でも,依頼者様の給料を時給換算したら「低すぎる」ということを強調し,有利な内容での和解をすることができました。